症状
食欲不振とは、食べ物を食べたいという気持ちが低下したり、無くなったりすることをいいます。日常生活に大した影響がないからとそのままにされる方も多いでしょう。
生きている以上、食べるということは絶対的に必要なことですから、それができていないということはあるべき状態ではないといえます。ただし食欲不振の多くは一時的なもので、時間の経過とともに「食べたい」という気持ちが起こってくるものです。しかしなかには食欲不振が病気のサインとして現れることもあります。
ただし、次のような食欲不振症状は、注意が必要です。
- 何日も食欲不振が続いている方
- 体重が減少している方
- 食欲不振以外の症状(発熱、嘔吐、下痢など)がある方
- 精神的な背景(ストレスや抑うつ)がある方
原因
食欲不振となる原因はさまざまです。
精神的なストレス、肉体的なストレス、睡眠不足が続くと、自律神経のバランスが乱れ、消化吸収を促進する機能が抑制され、食欲がなくなってきます。運動不足ではエネルギー補給の必要がなくなるため、食欲を起こす脳からの指令が少なくなり、食欲がなくなります。また、加齢による筋力低下から運動量が減り、エネルギー消費量が減ることも、食欲低下の要因です。
アルコールを過剰に摂ることも、解毒機能を担う肝臓の働きが低下し、食欲が低下していきます。肝臓の炎症を繰り返すと、肝臓以外にも胃や膵臓に負担がかかり、吐き気や食欲不振を引き起こします。
貧困やネグレクト、孤独などの社会的要因や薬剤服用の副作用として食欲不振を引き起こすこともあります。
そして、食欲不振は病気が原因となる場合もあります。
胃腸などの消化器系の病気や、生命活動維持に関わるホルモンに異常があり、体の活動性が低下してしまう甲状腺機能低下症などは、食欲不振の原因となることもあります。
他にも、うつ病や認知症などの精神的な病気によって、だるさや気力の低下、気分の落ち込みなどから食欲不振や睡眠障害などが多くみられますし、太ることへの恐怖などから、過度な摂取エネルギーの制限や下剤の乱用や、のどへの刺激による嘔吐などによって体重を減少させる栄養障害によるものもあります。
関連症状
食欲不振に関連する消化器の病気には次のようなものが挙げられます。
慢性胃炎
胃の粘膜が弱まり炎症が治りにくくなっている状態です。ピロリ菌や非ステロイド抗炎症薬、長期間のストレスなどが原因です。胃痛、胸やけ、腹部膨満感、胃もたれ、吐き気、げっぷなどが繰り返しみられるとともに、食欲不振が起こります。
胃潰瘍・十二指腸潰瘍
胃や十二指腸の粘膜が、胃酸や消化酵素によって傷ついてしまう病気です。えぐれたようになることもあります。ピロリ菌や非ステロイド抗炎症薬、ストレスなどが原因と考えられています。みぞおちの痛みや胃もたれ、吐き気などとともに、食欲不振が起こります。
胃がん
日本人に多いがんで、塩分の多い食習慣やピロリ菌が関係しているとされる病気です。初期の自覚症状はほとんどありませんが、病気が進行してくると、腹部膨満、みぞおち辺りの痛み、吐き気や食欲不振などの症状が現われることが多くなります。
断方法
食欲不振がある場合、次のような検査などにより診断します。
血液検査
一般検査や生化学検査で、現在の健康状態を知ることができます。胃もたれの原因特定の判断材料とするため、項目を絞った検査をおこなうこともあります。
エコー検査
食欲不振の原因となるような腹部の内臓(肝臓、胆のう、膵臓、脾臓)の腫瘍、胃がんや大腸がんがないかを確認するためにおこないます。
レントゲン
胃や腸の動きに関連するお腹の中(腹腔内)のガスや便が溜まっているかどうかを確認できる検査です。
胃カメラ検査
口または鼻から内視鏡を挿入し、食道から胃・十二指腸を直接見ることができる検査です。食欲不振に関わることが多い胃潰瘍・十二指腸潰瘍、ピロリ菌、胃がんや食道がんが無いかを確認します。
薬物療法による経過観察
症状などから食欲不振の原因が、内臓の病気ではなく内臓の機能(働き)の異常にある(機能性ディスペプシアといいます)と考えられる場合は、胃の働きを改善するお薬で経過をみることもあります。
受診促進
食欲不振はさほど珍しい症状ではありません。しかし、そこには必ず何らかの原因があります。長期間症状が続いている、体重が減っている、痛みや吐き気・嘔吐などがある場合には、我慢せずに消化器内科を受診しましょう。また、年齢を重ねることで症状が感じにくくなることもありますから、どれくらいの食事量をとっているのか、確認しておくと良いかもしれません。
実は大きな病気が食欲不振を引き起こしている、放置しておくと命に関わることである場合があるのも、食欲不振で気を付けたいポイントです。いつもの食欲不振と思わずに一度しっかり診察を受けましょう。