大腸がんとは
大腸は、小腸に続く管状の臓器で、右下腹部からお腹の中を時計回りに回り、肛門へとつながります。結腸と直腸に分けられ、結腸には盲腸、上行結腸、横行結腸、下行結腸、S状結腸、直腸があり、直腸には直腸S状部、上部直腸、下部直腸があります。
大腸がんは、大腸のどこかにがんができるもので、盲腸からS状結腸までの間にできたがんは「結腸がん」といい、直腸にできたがんを「直腸がん」といいます。日本人の場合、大腸がんのうちおよそ70%は、S状結腸と直腸にできるといわれています。
大腸の構造は、一番内側から粘膜層、粘膜下層、固有筋層となっており、一番外側には漿膜という膜があります。大腸がんには、良性のポリープ(腺腫 せんしゅ)からがんになるタイプと、大腸の一番内側にある正常な粘膜からがんが発生するタイプがあります。いずれにしても、一番内側の粘膜から発生し、大きくなると外側へと拡がっていきます。漿膜の外にまで拡がると、がん細胞がお腹の中にばらまかれたように拡がっていきます。この状態を「播種(はしゅ)」といい、お腹の内側にある腹膜に拡がったものを「腹膜播種」といいます。また、大腸の壁にあるリンパ管や血管にがん細胞が拡がると、全身へと拡がり、肝臓や肺などへがん細胞が拡がっていきます。この状態を「転移」といいます。
大腸がんは、発見されたときの状況により、その後の生存率が変わります。国立がん研究センターが2019年に公表した統計結果(がん診療連携拠点病院等 院内がん登録 2010-2011年 5 年生存率集計 報告書)によると、早期大腸がん(ステージⅠ)の5年生存率は90%以上、進行した大腸がん(ステージⅣ)の5年生存率は18%~19%ほどです。早期に発見し早期に適切な治療を行えば、がんの中でも、生命予後が比較的良いがんの一つです。
内視鏡検査(大腸カメラ、下部消化管内視鏡)により、早期発見、早期治療を開始することが重要です。
大腸がんのリスク因子
大腸がんのリスク因子は、生活習慣にあるといわれています。
たとえば食生活では、牛肉や豚肉などの赤い肉や、ベーコン、ハム、ソーセージなどの加工肉の摂取を好む人は、大腸がんになるリスクが高くなります。近年、日本人の食生活は欧米化がすすみ、こうした食材を好む方は増えています。また、喫煙をしている、体脂肪が多い、お腹周りが肥満になっている人は、大腸がんの発生リスクが高くなります。
大腸がんの中には、家族の病歴との深い関わりがあるタイプもあります。たとえば、家族性大腸腺腫症やリンチ症候群の人がいる家系では、大腸がんが多く発生する傾向があります。
また、大腸がんの発生要因としてもう一つ注目されているのが、運動不足やそれによる肥満です。国立がん研究センターの予防研究グループが行った研究により、肥満度を示す「BMI」が高くなると、大腸がんになる可能性が高くなることが分かっています。その傾向は女性よりも男性の方が強く、男性は「BMIが27以上30未満、および30以上」の場合、大腸がんになるリスクが高くなりました。
大腸がん初期症状のセルフチェックリスト
下記に大腸がん初期症状のセルフチェックリストをご紹介しますので、一度お目通しください。
- 便秘や下痢を繰り返す
- 便秘や下痢が慢性的に続く
- 排便後も残便感(便が残った感じ)がする
- 便に血が混じっている
- 腹部膨満感(お腹が張った感じ)がする
- 食欲が減った、体重が急に減った
- 便が細長くなった
- 原因不明の貧血が続く
- 便潜血検査で『要精密検査』と指摘を受けた
- 親族で大腸がんの治療を受けている方がいる
当てはまる方は大腸カメラ検査を受診いただくことをご検討ください。
大腸がんの症状
初期の大腸がんには、目立った自覚症状がありません。ある程度進行してくると、次のような症状がみられるようになります。
- 血便(便に血液が混じる)や下血(便が赤または赤黒くなる)
- 下痢や便秘をくり返す
- 便が細くなる
- すっきり排便できない(便がのこる感じ)
- お腹が張る
大腸がんが進行し、がん細胞からの出血が続くと、血便や下血が続き、貧血になります。また、食事を摂れていても体重が減って来たり、がんにより腸が狭くなって排便できずにお腹が張ってきたりします。
大腸がんと内視鏡検査
前述の通り、大腸がんには良性のポリープががん化するタイプがあります。大腸にできるポリープは、粘膜層から突出した形で発生します。大腸以外でもポリープができることはありますが(胃のポリープなど)、大腸のポリープはそのほとんどが「腺腫」と呼ばれる腫瘍です。ポリープのままならば良性なのですが、時間の経過とともに悪性化(がん化)する可能性があるため、すべてが切除の対象になります。
大腸がんの症状には血便がありますので、大腸がん検診では一般的に、検便をして便潜血が無いかを調べます。日本では現在、2日間の便を採取して便潜血を調べる検査が行われていますが、これは便の表面をなぞって血液が混じっていないかを調べる検査ですので、大腸の中の出血の有無を確実に知ることはできません。2日間の便のうち一方にでも便潜血が確認できたら、さらに詳細な検査として内視鏡検査を受けましょう。
がんにはさまざまな種類があり、それぞれに対するリスクとして喫煙や食生活を含む生活習慣などが挙げられますが、いずれも「リスクを下げる」ものであり、確実な予防ではありません。現在のところ、予防ができるがんは子宮頸がん(ワクチンの接種)と前がん状態(大腸ポリープ同様内診で確認できる高度異形成)を切除する、です。大腸がんの早期発見、大腸がん予防のためにも、大腸の内視鏡検査は定期的に受けるようにしましょう。
大腸がんの治療方法
大腸がんの治療法には、大きく4つあります。
内視鏡検査による治療
内視鏡検査により大腸の中を直接観察しながら、がんになる前の大腸ポリープや、ごく小さながんを切除することができます。大腸がんが初期(ステージⅠ)の場合、適応となります。ただし、切除したがんやポリープなどの病理検査の結果によっては、外科手術が必要となることがあります。
外科手術(開腹手術、腹腔鏡手術、経肛門的または経仙骨的な局所切除術)
がんを含む大腸を摘出する方法です。大腸がんができる部位にもよりますが、直腸や肛門を切除するような場合は、便を排出する出口として、人工肛門を造設することがあります。
化学療法
抗がん剤を使用した治療法です。点滴などで投与する場合と、内服による治療があります。外科手術が適応となる場合も、手術の前や後に、化学療法を行うことがあります。
放射線療法
大腸がんの放射線治療には、直腸がんの骨盤内での再発予防などの目的で行う「補助放射線治療」があります。また、がんによる痛み、吐き気やおう吐、めまいなどの症状を和らげるための「緩和的放射線治療」があります。
参考
国立がん研究センター がん情報サービス 食道がん
https://ganjoho.jp/public/cancer/esophagus/treatment.html
大阪赤十字病院 がん診療情報・がん診療センター 食道がん
https://www.osaka-med.jrc.or.jp/cancer2/each/cancer2.html
浜松医科大学 外科学第二講座 食道がんについて①
https://hama-surg2.jp/treatment/%E9%A3%9F%E9%81%93%E7%99%8C%E3%81%AB%E3%81%A4%E3%81%84%E3%81%A6%E2%91%A0/
日本食道学会 食道がん一般の方用サイト 内視鏡検査
https://www.esophagus.jp/public/cancer/endoscopy.html