胃内視鏡検査や大腸内視鏡検査ではどこを調べるのですか?
通常の胃内視鏡検査で観察するのは口や鼻から入り咽頭、喉頭、食道、胃、十二指腸の一部(十二指腸潰瘍等の病気の頻度が高い部位)までを行います。 また、大腸内視鏡検査では全大腸と一部の小腸(回腸の末端)を観察できます。
大腸カメラはどの位の間隔で受けなければいけないでしょうか?
飲酒、喫煙、欧米型の高脂肪食、肥満、加工肉(ハム、ベーコン、ソーセージ等)の摂取などがリスクを上げ、運動、野菜や果物の摂取などがリスクを下げると言われています。
検診で便潜血検査が陽性だったのですが、次に何の検査をした方がよいですか?
一度でも便潜血が陽性となった方は必ず大腸内視鏡による精密検査が必要になります。検査方法としては全大腸内視鏡検査(全ての大腸を内視鏡で観察)またはS状結腸鏡検査(大腸の途中までを内視鏡で観察)と注腸X線検査の併用が行われています。以前は後者が多く行われておりましたが、現在は大腸内視鏡検査の精度、技術が向上し、病気の見落としが少ないこと、注腸X線検査には施設間で精度に差があることなどから原則として全大腸内視鏡検査(大腸カメラ)が推奨されています。
大腸内視鏡で当日服用する下剤はどこで飲むのですか?
多くの方は院内でも自宅でも選んで服用して頂けます。 院内にも専用スペースを設けております。
検査で大腸ポリープが見つかったのですが、放っておいても大丈夫?
大腸のポリープの多くは腺腫(アデノーマ)という良性腫瘍です。その他、過形成性、炎症性、がん性ポリープ(多くは早期癌)などいくつかの種類があります。ポリープの種類により治療方針は違ってきますが、大腸癌の多くは腺腫が少しずつ成長することでがんに変化し、早期がん→進行がんへと進んでいくことが分かっています。そのため腺腫や癌性ポリープに関しては切除が必要になります。
胃のポリープは切除しなくても大丈夫?
胃のポリープには成因によりいくつかの種類があります。多くが胃底腺ポリープや過形成性ポリープであり、これらは治療を必要としないことが多いものです。 頻度は低いのですが治療が必要になるものとして腺腫や早期がんによるポリープがあります。ポリープの種類を確認する為、NBI(狭帯域光観察)拡大観察やポリープの生検(組織を一部をつまんで採取し、顕微鏡で細胞を確認する)による病理検査を行うことがあります。
大腸内視鏡検査で飲む下剤はどんな味がしますか?
現在、多く使われている粉を水に溶かして出来た液体の下剤を服用することが多いのですが、スポーツドリンクに似た味になっており、以前に比べるとかなり飲みやすくなっています。
症状がなくても定期的に内視鏡検査を受けた方がよいのでしょうか?
現在、一般的な検診で行われている便潜血検査(2日法)では早期がん・進行がんを含めて約40%近くの見逃しがあると言われていますので、がんを早期発見する為には症状がなくても定期的に内視鏡検査を行うことが必要です。 また、無症状で見つかる大腸がんは早期がんの割合が高く40~50%の方は内視鏡による治療が可能です。一方、症状が出てから見つかるがんに関しては80%の方に手術が必要になります。
大腸がんが増えているって本当ですか?
日本では食事、生活スタイル、高齢化に伴い大腸がん死亡率は増加しつつあります。 最近の臓器別がん死亡数では女性で1位、男性で3位(1位:肺がん、2位:胃がん)を占め、年間4万8千人の方が大腸がんで亡くなっています。
どんな人が胃がんになりやすいのですか?
胃がんの最も重要なリスクファクターはピロリ菌の感染です。ピロリ菌の感染を背景に、喫煙、野菜・果実摂取不足、高食塩摂取(1日10g以上)、遺伝などの因子が複雑に作用し、がんが発生するとされています。
ピロリ菌に感染している人は多いのでしょうか?
現在、50歳以上の日本人で約8割がピロリ菌に感染していると言われています。 逆に30歳以下の若年者では感染率が低くなります。
ピロリ菌の感染を調べるにはどのような検査をすればよいのでしょうか?
ピロリ菌感染の有無を調べる検査には血液、便、尿を用いた検査(ピロリ菌の抗原や抗体を測定する)や尿素呼気試験(空腹時に検査のために用いる薬を服用し、呼気を採取する)、胃カメラ施行時に胃の粘膜を一部採取して行う迅速ウレアーゼ試験や培養検査などがあります。いずれの検査も精度はほぼ変わらないとされています。
ピロリ菌の検査を受けたことがないのですが、1回受けた方がよいのでしょうか?
現在、ヘリコバクター学会では全てのピロリ菌感染者に対し、除菌治療が勧められております。また、H25年より胃カメラを受けて慢性胃炎が確認された方(ピロリ菌感染がある方はほぼ慢性胃炎を認めます)にはピロリ菌感染の検査と除菌治療が保険で認められました。ピロリ菌の除菌治療は早期に行う程、胃がん予防効果も高くなりますので早期に1度は受けて頂くことをお勧めします。
ピロリ菌に感染していた際の治療について教えて下さい。
ピロリ菌の除菌治療は一般的に3種類の薬剤(抗生物質2種と胃酸分泌抑制剤1種)を朝・夕食後の1日2回、1週間服用して頂きます。これによって約80%、除菌が可能です。ただし、喫煙者の方では成功率が低くなります。
ピロリ菌を一度除菌してもまた感染することがありますか?
一度除菌に成功した方が再度感染することは殆どなく約3%程と言われています。
ピロリ菌ってなんですか?
ピロリ菌は胃の粘膜に生息しているらせんの形をした細菌です。 胃には強い酸(胃酸)があるため、昔から細菌はいないと考えられていましたが、1982年にピロリ菌が胃の中に生息していることが分かりました。以後、様々な研究によりピロリ菌が胃炎、胃潰瘍、胃がんなどの病気に深く関わっていることが明らかにされています。
どのようにしてピロリ菌に感染するのですか?
感染経路はまだはっきりと分かっていませんが、口を介した感染(経口感染)が多いと考えられています。ピロリ菌の感染率は乳幼児期の衛生環境と相関している と考えられており、上下水道が普及していなかった世代の人で感染率が高くなっています。
ピロリ菌感染を予防する方法はありますか?
ピロリ菌の多くは乳幼児期までに感染すると考えられています。 衛生環境が整った現代では、ピロリ菌の感染率は著明に低下しており、あまり神経質になる必要はないと思われます。
ピロリ菌はどんな病気をおこしますか?
ピロリ菌に感染すると胃に炎症を起こすことが分かっていますが、多くの人に自覚症状はありません。ピロリ菌の感染による炎症が長い期間続くと、胃粘膜 の胃酸などを分泌する組織が壊された状態(萎縮性胃炎)になります。さらに進むと胃粘膜は腸の粘膜のようになり、胃がんの発生母地になります。
ピロリ菌を除菌するとどんな効果がありますか?
胃潰瘍・十二指腸潰瘍の再発抑制や胃がん発生リスクを低下させることが分かっています。
ピロリ菌に感染している人はみんな除菌した方がいいのですか?
日本には約3500万人の感染者がいるとされていますが、多くの方は自覚症状がなく生活されております。 日本ヘリコバクター学会のガイドラインではピロリ菌感染者すべての方に除菌療法を受けることを強く勧めています。
胃潰瘍・十二指腸潰瘍の原因はピロリ菌だけですか?
ピロリ菌以外の原因としてロキソニンなどの非ステロイド性消炎鎮痛剤(NSAID)やお酒、タバコ、過度のストレスなどが分かっています。
胃内視鏡・大腸内視鏡検査の検査時間はどのくらいですか?
胃内視鏡検査で約5~10分、大腸内視鏡検査は病変がなく観察のみでしたら約20分程、ポリープ切除などの処置が必要な場合で約30分程になります。
胃・大腸内視鏡検査の検査費用を教えて下さい。
保険診療(3割負担の場合)で行った際には胃内視鏡検査で約5000~7000円程(病理検査を行うと+3000円程)、大腸内視鏡検査で約6000~8000円程、ポリープ切除が必要な場合で約2~3万円程になります。
胃・大腸内視鏡検査の際、どんな時に病理検査が必要になりますか?
内視鏡検査で病変を認めた際にその病変が良性か悪性(がん)か、悪性(がん)ならばどの程度の進行(血管やリンパ管への浸潤の有無など)しているか、ポリープ切除をした際にポリープの取り残しがないかなどの判断をする為に採取した組織を顕微鏡で確認する病理検査を行います。病理検査は病理医という顕微鏡による診断の専門家が診断を行い、通常の肉眼だけの観察よりも精度が高い検査が行えます。
食道がんになりやすい人は?
食道がんの危険因子には喫煙、飲酒、咽頭がんや喉頭がんにかかった方、栄養失調、ヒトパピローマウイルス感染、お酒を飲むとすぐ顔が赤くなる方(アルデヒド脱水素酵素2の欠損)、逆流性食道炎などがありますので、これらの危険因子を複数持っている方は定期的な内視鏡検査が必要になります。
お腹の痛みなどの症状があるときには、診察を受けた当日に胃や大腸の内視鏡を受けることができますか?
内視鏡検査をする際には胃や大腸の中がきれいな状態(食物や便がない状態)になっている必要があります。なので、胃内視鏡検査では少なくとも食後7時間以上 あけてから行い、大腸内視鏡検査では検査当日に下剤を飲み、準備する必要があります。
胃・大腸内視鏡検査の後はすぐに食事がとれますか?
胃内視鏡検査ではのどの麻酔を行っておりますので麻酔がきれてくる検査後1時間程度から食事が可能です。また、大腸内視鏡では殆どの方が検査の直後から食事をとって頂けます。
大腸内視鏡でポリープを切除した場合、日常生活での制限はありますか?
ポリープ切除後は切除した傷口から出血したりする可能性がありますので、検査後1週間は重いものを持ったり、激しい運動・飲酒は避けて頂き、入浴はシャワーだけにして頂きます。
早期がんは内視鏡で治療できるのですか?
早期がんの中でもまわりのリンパ節に転移や肺・肝臓などの全身臓器に転移がないがんは内視鏡での切除が可能になります。症状がなく検診などで見つかるがんの 6割は内視鏡治療が行われます。逆に症状が出てから見つかるがんの8割は進行がんと言われています。
大腸がんを予防するには?
食生活で脂肪(肉類、乳製品、卵)を抑えて、食物繊維(海藻、きのこ、根菜、果物類)を多く摂取して下さい。また、腸内の善玉菌を増やす為に納豆やヨーグルト、みそ、漬物、オリゴ糖(ごぼう、きな粉、たまねぎ、ハチミツ、ニンニク)なども心がけて摂るようにしてください。他にも禁煙、節酒、便秘予防なども大事になります。
大腸がんのステージⅢと言われたのですが、ステージについて教えて下さい。
ステージは大腸がんの進行程度を評価した病期のことを言います。 ①がんの大きさ、②リンパ節転移の程度、③他の臓器への転移(肺、肝臓、脳など)の3つを評価して、ステージ0(初期)~ステージⅣ(進行がん)に分類されています。 この分類されたステージにより治療方針を決定します。
大腸がんや胃がんを血液検査で調べることはできますか?
がん細胞から作られる物質で腫瘍マーカーというものがあり、これを血液検査で調べることはできます。大腸がんや胃がんではCEAやCA19-9などが あります。ただ、これらは早期がんでは異常が出にくく、全てのがんで陽性になるわけではありません。そのためがんの早期発見には不十分であり、実際の臨床の場ではがんを治療した後の再発の発見や治療効果の指標に使われています。
大腸がんを治療した後にまた大腸がんになることがありますか?
治療をした場所に再発を起こす場合とまた別の場所にがんが発生する(5~8%)ことがありますので治療後も定期的に検査をうけることが大事です。また、大腸がんは他の臓器のがん(胃、肝臓、乳がんなど)を合併することも多い(5%)ので大腸がんが見つかった方は他の臓器にもがんがないかを調べる必要があります。
血便の原因になる病気は?
大腸がん・ポリープ、結腸憩室、感染性腸炎、虚血性腸炎(便秘などが誘因となる)、抗菌薬起因性腸炎、痔核(いぼ痔)、裂肛(切れ痔)などがありますのでこれらの原因を調べる為に大腸内視鏡を行いまます。
下痢が続くのですがどんな病気が考えられますか?
クローン病、潰瘍性大腸炎や慢性腸管感染症(腸結核、サイトメガロウィルス腸炎、赤痢アメーバ等)、慢性膵炎などのすい臓疾患、内分泌疾患(糖尿病、甲状腺機能亢進症等)、過敏性腸症候群など多くの病気が考えられますので医師に御相談下さい。
急性膵炎の症状と原因を教えて下さい。
症状には上腹部や背中の痛み、はき気や発熱などがあります。原因の多くは飲酒によるものですが、他にも胆石や高脂血症、薬の副作用、膵がんなどがあげられます。急性膵炎は場合によっては命にかかわる事もあるので、異変を感じたらすぐに治療を受ける事が必要です。
吐血や黒色便の原因には何がありますか?
胃・十二指腸潰瘍、胃・食道静脈瘤、胃がん、急性胃粘膜障害、マロリー・ワイス症候群などの病気が考えられます。
なぜ内視鏡のNBI(狭帯域光観察:Narrow Band Imaging)検査はがんの早期発見が可能なの?
がん細胞は血管から栄養を補給して増殖する為、自分で血管を作り出してしまい、がんの周辺には小さな血管が集まりやすくなります。NBIはこうした血管や 細かい粘膜の模様を浮かびあがらせる特殊な光を照らして初期がんの変化をわかりやすくするからです。
内視鏡のNBI(狭帯域光観察:Narrow Band Imaging)検査って苦しいの?
ANBIを用いる内視鏡検査は画像をボタン1つでNBIに切り替えることができるので検査手順は通常の検査とまったく同じです。また、対象の臓器も食道・胃・十二指腸・大腸など幅広い領域で有用性が報告されております。