症状
「吐き気」とは吐きそうになる感覚のことをいいます。「嘔気(おうき)」や「悪心(おしん)」ともいわれるものです。
吐き気は実にさまざまなことが原因で起こる症状ですが、医療機関を受診しなくても自然に治ってしまうことも多いかもしれません。問題となるのは、我慢できないほどの辛い吐き気や吐き気以外の症状を伴っている場合、大きな病気のサインとして現れた吐き気です。
原因
吐き気は、脳にある嘔吐中枢(おうとちゅうすう)が刺激されることで起こります。この刺激が大きくなると、吐きそうになる感覚を超え、実際に吐いてしまう「嘔吐(おうと)」となります。
吐き気や嘔吐を引き起こす原因には次のようなものが考えられます。
食べ好きや飲みすぎ
暴飲暴食によって胃の粘膜に炎症を起こし、吐き気などの症状が起きることがあります。また、アルコールの飲み過ぎにより、体の防御反応として吐き気をもよおします。
食あたり(食中毒)
ウイルスや細菌などで傷んだ食品や、きのこやフグなどの毒性のある食品を食べると、非常に強い吐き気や嘔吐、胃の痛みなどを起こすことがあります。
ストレス
ストレスによって自律神経のバランスが崩れると、嘔吐中枢を刺激し、吐き気をもよおすことがあります。
妊娠
多くの妊婦が妊娠初期に経験する「つわり」も吐き気をもよおします。
悪臭や煙、タバコの吸いすぎ
排気ガスや不潔な場所での臭い、洗濯洗剤や柔軟剤、整髪料やシャンプーなどの嗅覚からの不快感や、タバコに含まれる有害物質によって吐き気をもよおすことがあります。
お薬などによるもの
服用や治療のためのお薬の副作用として吐き気を起こすことがあります。よく知られているのが抗がん剤ですが、他にも医療用麻薬や気管支拡張薬、心不全の治療薬、貧血の治療薬などでも吐き気をもよおすことがあります。
吐き気をもよおす病気
メニエール病や突発性難聴など内耳の異常から起こる病気、緑内障、心筋梗塞、脳卒中、風邪やインフルエンザでも吐き気をもよおすことがあります。
関連症状
吐き気に関連する消化器の病気には次のようなものがあります。
急性胃炎
暴飲暴食やピロリ菌感染、ウイルス、食中毒、ストレス、アレルギーなどが原因となり、胃粘膜がただれ、下痢や吐き気をもよおします。多くは数日で軽快しますが、嘔吐、吐血、下血などを起こすこともあります。
胃潰瘍・十二指腸潰瘍
胃や十二指腸の粘膜がただれ、傷つき、えぐれたようになる病気です。胃潰瘍では食事中~食後にかけて、十二指腸潰瘍では早朝や空腹時に痛みが現れ、吐き気をもよおします。
胃がん
がんの進行によって消化管が狭くなったり、圧迫されたりすることで内容物が通過しにくくなり、吐き気をもよおします。食事中や食後に苦しくなることが多く、腹痛やお腹の張りなどもみられます。
虫垂炎
みぞおち辺りの突然の痛みから始まることが多く、痛みは「おへそ」の辺りから徐々に右下腹部に移動していき、吐き気・嘔吐、発熱もみられます。発症は10~30代に多くみられ、症状を放置すると重い腹膜炎を起こすこともあります。
腸閉塞
腸がねじれや、腫瘍・腸の機能障害によって、腸が詰まり、内容物が留まってしまっているため、便やガスが溜まり、吐き気や嘔吐を起こすほか、腹痛やお腹の張りなどもみられます。
肝炎、膵炎、胆石症
ウイルス感染による急性肝炎では、吐き気・嘔吐が起こることがあり、発熱や倦怠感、黄疸などを伴います。膵炎や胆石症でも吐き気や嘔吐、腹痛がみられます。
腹膜炎
腸閉塞、胃潰瘍や胃がんによる腹膜穿孔などが原因で、腹膜が細菌に感染し、炎症が起こる病気です。吐き気や嘔吐のほか、腹痛、発熱、呼吸障害などもみられます。命に関わることもある病気です。
生活上の注意
吐き気を感じたら、まずは空気を入れ替える、冷たい水でうがいをする、横を向いて寝転がるなど、心身をリラックスさせると気分が紛れてよいでしょう。自分の好きな場所でゆっくり休んでいる様子、呼気とともに吐き気が遠のく様子を想像したり、肩幅程度に足を開いて椅子に腰かけ膝に手を置く楽な姿勢を作ったり、また、頭を冷やして軽く目を閉じて静かにするのもよい方法です。なお、急に体を動かすことで嘔吐を誘発してしまうこともありますので、ゆっくりと動くようにしましょう。
こうした方法で様子をみても改善しない、吐き気が強くなるようであれば受診しましょう。
診断方法
吐き気の診断方法として、次のような検査などをおこなうことがあります。
胃カメラ検査
胃もたれの原因として胃の病気だと考えられる場合、口または鼻から内視鏡を挿入し、食道から胃までを直接観察する検査をおこないます。食道や胃がどのような状態になっているかを確認するためには、この検査が有用です。胃潰瘍・十二指腸潰瘍、胃がんなどの病変の早期発見が可能で、必要に応じて組織を採取し、更に詳しく検査することもあります。
また、胃カメラ検査をおこない、上記のような病気の可能性を除外することで、機能性ディスペプシアであると診断されることにもつながります。
血液検査
一般検査や生化学検査で現在の健康状態を知ることができます。吐き気の原因特定の判断材料とするため、項目を絞った検査をおこなうこともあります。
薬物療法による経過観察
胃もたれの原因となる病気や症状に応じたお薬を服用しながら、経過観察とすることもあります。機能性ディスペプシアの場合は、抗不安薬や抗うつ薬などが処方される場合もあります。
受診促進
吐き気は心身共に辛い症状です。次のような症状もみられるときは、我慢せずに早めに消化器内科を受診しましょう。
- 吐き気が治まらない、だんだん強くなる
- 腹痛や、38℃以上の熱もある
- 水分も摂れない
- 下痢もしている
- お腹が張っている感じがする
吐き気から嘔吐へと症状が進んだ場合、体内で重要な役割を担うナトリウムなど電解質のバランスが崩れてしまい、倦怠感、手足のしびれ、脱水へと進み、これがさらに進むと意識障害を起こす危険性もあります。また、睡眠中の嘔吐は、誤嚥から窒息の可能性もあり危険です。しばらく様子を見る場合も、無理に食事をとることはしなくてもよいので、少しずつ水分を摂りながら、翌日まで吐き気が続くようであれば受診しましょう。