症状
ひとくちに腹痛と言ってもその範囲は広く、上腹部中央(みぞおち)辺りから下腹部までの場所に起こる痛みを腹痛といいます。範囲が広いだけに痛みの感じ方や場所によって原因もさまざまです。
特に、我慢できないほどの激痛、今までに経験したことのない痛み、突然始まった激痛、不安になるような痛み、振動で響く痛み、鈍い痛みでも持続的に起こっている場合には医療機関での診察を受けるべき症状といえます。
また腹痛では、発熱、下痢、吐き気、嘔吐、吐血・下血、腹部膨満、黄疸などの痛み以外の症状を伴っている(随伴症状といいます)場合も多くみられます。特に血便や黒色便、血尿、38℃以上の高熱、立ちくらみなどを伴っている場合や、最近半年の間に大幅な体重減少がみられる、便が細くなった場合などには早めに医療機関を受診しましょう。
上記のような症状ではなく、単に生理的な腹痛であればそれほど問題になることはありません。食事や睡眠・運動などの生活習慣に気を付けて自宅で様子をみるものよいでしょう。
原因
温度差やストレスなどによる自律神経の乱れや食習慣や嗜好なども腹痛の原因となりますが、胃や腸など、さまざまな部位の病気によっても腹痛はひき起こされます。中には命に関わるような重大な病気のサインとして腹痛が起こることもありますので、「いつもと違う腹痛」を放置することは大変危険です。少しでも心配な痛みや随伴症状がある場合は、躊躇せずに受診することをおすすめします。
腹痛が起こる原因として最も多くみられるのは、消化器の病気によるものです。その場合、痛みはどのように発症したのか、どこがどのように痛むのか、随伴症状の有無などから、原因となる病気をある程度推定することができます。例えば、突然の強い痛みであれば、消化管の穿孔(消化管に穴が開くこと)により内容物が漏れ出てしまうようなことも考えられます。
他にも感染性胃腸炎や虫垂炎(盲腸)、食あたり、下痢や便秘なども腹痛の原因となります。また、腹痛の場所として、腹部を幾つかのゾーンに分け、その原因を推定していきますが、腹部全体が痛いのか限られた場所が痛いのかなども判断材料となります。
関連症状(腹痛に関連する病気)
腹痛に関連する消化器の病気としては次のようなものが考えられます。
感染性腸炎
腸管にウイルスや細菌が感染することで起こる病気です。
腹痛以外にも下痢や嘔吐、発熱といった症状がみられることがあります。下腹部やお臍の周りに痛みが出ることが多い病気です。
胃潰瘍・十二指腸潰瘍
胃や十二指腸を守る粘液や胃酸のバランスが崩れ、粘膜が傷ついている状態です。心窩部(みぞおち)~脇腹にかけて痛みが出ることが多い病気です。
虫垂炎
盲腸からつながる虫垂という部分に便が詰まり、細菌感染を起こして虫垂が腫れる病気です。心窩部の痛みから始まり、吐き気やおう吐を伴うこともあります。徐々に痛みの場所が臍周辺、右下腹部に移っていくのが特徴です。
過敏性腸症候群
3か月以上の期間において、腹部全般に出る腹痛と下痢と便秘を繰り返す、腸の機能異常が原因とみられる病気です。排便で腹痛がするのが特徴です。
腸閉塞
腸管の内容物が通過できなくなっている状態です。臍周囲に時々強い痛みがあるケースと、ずっと鋭い痛みが続くケースがあります。おう気やおう吐、腹部膨満感があります。腹部の外科手術の経験がある方は腸閉塞になりやすい、という傾向があります。
診断方法
胸やけを診断する方法には次のようなものがあります。
血液検査
腹痛の診断には、丁寧な問診や触診などの診察をおこなった上で、症状や原因の推定から、必要に応じて次のような検査や投薬をおこなうことがあります。
エコー検査
腹痛の原因を調べる最初の検査として、一般的に広く行われる検査です。腹痛の原因となる可能性がある、腹部大動脈瘤破裂や腸閉塞、急性の胆嚢炎や虫垂炎など、多くの病気を見つけることができます。エコー検査はレントゲン検査やCT検査などと違い、放射線を使用しないため被ばくの心配がありません。
レントゲン
腸閉塞や消化管の穿孔(消化管に穴が空くこと)、消化管の異物、尿路結石などが疑われる場合に行います。放射線被ばくがありますので、妊婦や妊娠の可能性がある方は、受けることができません。
薬物療法による経過観察
痛みを抑えるための鎮痛剤など、症状に応じたお薬を服用していただき、経過観察とすることがあります。原因が判明したら、その原因にあったお薬を服用していただきます。
受診促進
突然の腹痛や長く続く腹痛は辛く、不安になられる方も多いでしょう。腹痛の原因は多岐にわたるため、その特定は簡単ではありません。中には大きな病気が隠れていることもあります。「いつものよくある腹痛」というご自身の判断が、大きな病気を見逃したり、場合によっては生活を脅かしたり命に関わったりすることもあります。そうならないためにも早期発見が大切です。
また、いつもと違う痛みを感じたときや痛み以外の症状が現れた場合も、我慢せずに消化器内科を受診しましょう。
設備等の関係で当院での治療が難しい場合、女性の腹痛(特に臍より下部)で婦人科系疾患が疑われる場合など、速やかに提携医療機関や専門医への紹介をおこなっています。